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    似て非なり、「トラッド・アイビー・プレッピー」の違いを明らかにした

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    アメリカントラッドとは何だ?

    アメリカントラッドとアイビー、プレッピーはどう違うのか?トム・ブラウンはパンツの折り返しを何センチにしているのか?

    今やモードとして注目されるようになったアメリカントラッド。しかし、本当の着こなしを知っている人がどれだけいるだろうか。

    トラッド・アイビー・プレッピーのそのすべてがここで明らかになる。

    01 アメリカントラッドとは何だ?
    02 ショートパンツにおけるコーディネートの掟
    03 アイビーは背中で主張する
    04 アイビージャケットのルール
    05 下半身のチェックポイント
    06 夏のアイビーアウター
     

    CODE in TRAD
    トラッド、アイビー、プレッピーの新解釈とコーディネート術

     

    theme TRAD is TREND 01

    アメリカントラッドとは何だ?

     

    ファッションシーンの中で使われる「アイビー」とは、アメリカで1954~55年、日本ではその7~8年後に大流行した「アイビーリーグ・モデル」から派生したスタイル。

    アイビーリーグとは、ビル・ゲイツやアル・ゴアが学んだハーバード大学、ブッシュ大統領親子やクリントン前大統領夫妻が卒業したイェール大学などアメリカ東部(ニューイングランド地方)の有名私立大学8校からなる団体。

    そこに在籍する大学生やOBたちの1950〜60年代におけるファッション・スタイルが「アイビー」である。代表的なブランドは大学前に出店していたカスタム・テイラーの《ブルックスブラザーズ》や《J・プレス》。

    1958年、IACD(国際衣服デザイナー協会)によって「アイビー・ルック」が世界中に公表され、「アメリカン・トラディショナルなスタイル」と説明された。つまり、「アイビー」と「アメリカン・トラッド」はほぼ同義語なのである。

    一方、「プレッピー」とは、1980年に出版された『PREPPYHANDBOOK』によって世界に発表されたスタイル。

    アイビーリーグに所属する大学進学を目指すプレパラトリー・スクール(予備学校)の生徒たちの間で80年代に流行し、日本には1年遅れで伝わった。

    アイビーよりも子供っぽく、80sらしくカラフルで、シルエットもルース。代表的プランドは《ポロラルフローレン》。

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    PREPPY HAND BOOK

    アイビーとプレッピーはともにアメリカのスクールスタイルということで類似しているが、例えばパンツを例に挙げると、アイビーがポプリンのコットンパンツやホワイトジーンズが代表的アイテムであるのに対し、後者はチノパン。

    アイビーがコットンのスイングトップやレタードカーディガンであるのに対し、プレッピーはナイロンのコーチジャケットにスウェットシャツといった具合に、素材やシルエットなどにも違いが見られる。

    アイビーもプレッピーもルーツはブリティッシュ・スポーツスタイル。ハンティングやゴルフなどに使われていたジャケットやニット、シューズをより機能的に発展させたものが、合理性を好むアメリカの学生たちに受け入れられ、デイリーウエアとなったと考えられる。

    トム・ブラウンが提唱し続けるスタイルはアイビーがベースだが、ディテールにおいて明確にアップデートされている。

    アイビースーツの基本であるナチュラルショルダーは、より硬く厚い芯地によってビルドアップされる。

    着丈のみならず袖丈もより短くなり、ウエストもやや絞られる。パンツは時代と逆行するハイウエスト。60年代にはタブーとされたグレーのスーツに白いソックスというコーディネイトが、よりナードさを加速させている。

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    THOM BROWN

     

     

    theme SHORT CUTS 02
    ショートパンツにおけるコーディネートの掟

     

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    ハーバード大学出身で当時売り出し中の上院議員だったJFKがジャッキーと結婚した頃から、アイビースタイルが全米で大流行。JFKは当時も今も最高のアイビー・アイコンだ。

     

    アイビーの基本となるボトムスはショーツだ。
    理由は「ラクだから」。

    アイビーは60年代の大学生の間で流行したスタイルなだけに、「丈夫で、着易く、安価であること」が求められた。

    スーツやブレザーのカチッとしてドレッシーな印象をアメリカン・トラッドに抱いているとしたらそれは間違い。

    スピリットは質実剛健、バンカラ風。それはあらゆるディテールにも表れている。そうした理由からパンツもパジャマ感覚ではけるショーツが人気だった。当時はコットンポプリンや、マドラスチェックのバミューダパンツ、ホワイトジーンズをカットオフしたものが多かった。

    今シーズンはショーツの当たり年。夏らしいシアサッカーやコードレーンを中心に、ドレッシーなサマーウールのショーツも多く見かける。カットオフしたものではチノが目立つ。60年代と比較すると丈は短く、タイトになっている。

    ショーツのコーディネイトで肝心なのはトップスやシューズとのバランス。トップスを重く、足下を軽くすっきり見せるのがアイビー風だ。足下は素足が基本。

    キャンバスオックスフォードのスニーカーでもコードバンのコブラバンプでも素足で。石田純一と揶揄されても気にしない。そしてできるだけナローウィズのシューズを選びたい。

    アイビーリーグに属する学校はアメリカでも比較的北部に位置するため、夏でも湿度が低く涼しいところが多い。

    そのため、ショーツでもトップスはセーターやフーデッドパーカ、さらにはコートなどのアウターを合わせるスタイルが多く見られた。

    これにより、トップへヴィー・ボトムライトなシルエットが定着したと思われる。

    とはいえ、日本の夏は高温多湿。さすがにショーツにセーターは着られない。だが、シャツを着るにしても半袖ではなく、JFKのようにロングスリーブの袖をまくって着るとバランスが良い。

    半袖の場合はボリュームを出すベく、裾はパンツアウト。その場合、プルオーバーで裾が短いものをチョイスしよう。

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    映画「アニマルハウス」のジョン・ベルーシ。どう見ても父ちゃん坊やだが、ボタンダウンにスウェットシャツをマドラスチェックのショーツに合わせるのは王道コーディネイト

     

     

    theme BACK to the BACK 03
    アイビーは背中で主張する

     

    アイビーはバックシャンだ。
    背面に特徴的なディテールが数多く見られる。

    そのほとんどが今ではお目にかかれない。実質的に機能しなかったからだ。
    つまり、ほとんど無駄だったというワケ。

    しかし、そうした「あまり役に立たないディテール」が妙におしゃれ心をくすぐるのもまた、アイビーの魅力なのかもしれない。

    アイビーのベースとなるボタンダウンシャツ。
    このシャツの後ろ姿はとても鏡舌。

    《ブルックスプラザーズ》や《アイクベーハー》などのシャツはボックスプリーツしか目立ったディテールはないが、1960年代に流行した《GANT》や日本を代表するアイビーブランドの《VAN》では、ボックスプリーツの上にループ(これは当時なぜか「アイビーループ」と呼ばれた)が施され、さらに襟の真後ろにまでボタンダウンになっていた。

    確かに、ボックスプリーツ以外ほとんど無駄、機能しないディテールである。
    だが、シャツ襟の後ろボタンがついているだけで、他のボタンダウンシャツよりもこだわりがあるように見えるから不思議だ。
    最近、後ろボタンやループのついたシャツがチラホラ復活している。

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    1960年代当時、アイビーパンツと呼ばれていたのが、バックストラップ(尾錠、バックシンチとも呼ぶ)付きのコットンパンツ。

    これもウエストアジャスターという機能はわずかにあったものの、ほとんどがお飾り。
    ベルトループがついていることからもわかるように、ほとんど意味のないディテールだった。このバックストラップも今ではほとんど見かけなくなったが、アイビー人気再燃とともに復活の兆しを見せている。

    ただ、シャツをパンツアウトしたのではせっかくのバックストラップが見えないので、コーディネイトには多少の制約を余儀なくされるのだが。

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    エルボーパッチは野暮ったくも、質実剛健を感じさせるアイビースピリット溢れるディテール。

    特にセーターやツィードジャケットなど、摩擦に弱いウール素材につけられる。ポケットに手を入れ、肘をはるとパッチがキュートに見える。
    これまたアイビーらしいリアビュー。

    ディテールだけではなく、コーディネイトにおいてもバックスタイルが主張するアイビースタイルがある。

    「腰巻き」という着こなしだ。体温調整のために、脱いだインナーを腰に巻く。この際、ニットよりもネルシャツのようなカラフルなアイテムが絶妙。

    スタジャンなどのアウターを着たままシャツを腰に巻くと、後ろから見たらキルトを巻いているようで可愛い。ゆめゆめカーディガンやセーターなどを肩にかけてはいけない。今時テレビ・ディレクターだってコントの中でしか肩にはかけていないのだから。

     

     

    theme JACKET FLASH 04
    アイビージャケットのルール

     

    アイビージャケットといえば、段返り3ボタン中1つ掛けが鉄則である。上2つ掛けではクラシックすぎるし、2ボタンではモダンすぎる。

    バックストラップ同様、中1つ掛けではトップボタンやそのためのボタンホールは無駄なデザインとなるのだが、何度も言うようにこの「あまり役に立たないディテール」こそアイビーのアイデンティティなのだ。

    トップボタンは、通常胸ポケットパッチの底辺と同じ高さとなる。

    ノッチドラベルで1/4インチのウエルトシームと呼ばれるステッチがかかる。このウエルトシームはショルダーやフロントのエッジ、背中のセンターラインなどにも施される。

    制服のような野暮ったさもあるが、それがまたアイビーらしさとも言える。スーツの場合、ジャケットはフラップポケットとなることが多く、ブレザーなどではパッチポケットが多い。ここにもウエルトシームが施される。

    バックスタイルが特徴のアイビー、当然ベントの切り方も独特だ。センターフックベントと呼ばれるクランク状にステッチが走るディテールは、アイビージャケットにしか見られない。

    シアサッカーやマドラスチェックなどを用いたサマーアイビージャケットも今シーズンは人気だ。

    2008年スタイルはパンツがショーツでセットアップになるところ。また3ピースが多いのも特徴的。レギュラーカラーをあえてピンで留める。さらには、ポケットチーフは従来のスクエア出しではなく、《ブラックフリース》でトム・ブラウンが主張した三角出しが、ニューコードだ。

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    映画『卒業』でシアサッカーのジャケットを着たダスティン・ホフマン。 1960年代のアメリカ東部の大学生という役柄だけに、この映画の彼の服装はまさにアイビーの教科書。

    かつてはサマージャケットにあまり見られなかった「持ち出し」のついたラベルや、《ポールハーデン》のようなピークドラベルのジャケットも、今日のアイビースタイルとの相性がいい。

    本来防寒のために胸元をラベルで閉じたり、ボタンで留めたりしたのだが、ニューコードでは寒さなど関係なく着こなしたい。

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    theme BOTTOM LINE 05
    下半身のチェックポイント

     

    今日のアイビーブームをもっとも象徴的に表しているのが、短いレングスだろう。

    トム・ブラウンが鮮烈なデビューを飾ったのも、パンツの短さによるサプライスだった。

    もはや「ツンツルテンのパンツ」=アイビーという認識である。

    1960年代、アメリカ東部のアイビーリーガーたちのパンツも短かった。ほとんどくるぶしが丸見え。

    トムはそれに倣っているのだろうが、さらに印象づけるためにクロップドパンツのような短さまで提案した。

    今日のアイビースタイルにおいて理想的なパンツの長さは、くるぶしがちょうど出るくらいだろう。トムや《ブラックフリース》を扱うニューヨークのショップスタッフもその長さを勧めている。

    今まではいていたパンツよりも7〜10センチほど短くする感じだろうか。また、パンツのシルエットはアイビーの場合「パイプステム」が大原則。パイプのようにお尻は丸く、そこから裾へは細めのストレート。極端なテーパードは醜いとされた。スキニーよりはゆとりがあり、アーミーチノよりはタイト。気になる裾幅は19〜21センチが美しい。

    さて、問題は裾の折り返し(ダブル)である。パンツの丈を短くするなら折り返しは必須だが、その幅が悩みどころ。《ブラックフリース》のショップスタッフは「2インチクォーター」を勧めていた。約5.7センチ。

    日本でアイビーが流行した1960年代では3.5センチか4センチだったのに比べると、かなりの幅広。どうやらそれがトラッドのニューコードのようだ。

    ほかに、トム・ブラウンが2008年S/Sのコレクションで見せたメッシュベルトの先端をだら〜んと長く垂らしたスタイリングもニューコード。

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    80年代後期、パンクなスクールボーイは、ジャマイカのルードボーイに倣ってスクールカラーのリボン(リング)ベルトを長く垂らしていたが、アイビー=優等生というイメージへのアンチテーゼなのだろうか。

    レングスを短く、折り返しをつけるのはジーンズやワークパンツにも適用する。
    裾をまくってくるぶしが見える丈でパンツをはくのは、決してニューコードではなく、あのリバー・フェニックスが演じた1960年代初期の少年の着こなし。ただ、それを幅の広いヘリンボーンのワークパンツやアーミーチノでもやっちゃうところが新しい。

    裾が短くなると、シューズとのコーディネイトに苦心するところだが、アイビーなフットギアはさほど多くはない。

    革靴ならローファーかプレーントウ。スニーカーなら《トップサイダー》のようなキャンバスオックスフォード。

    その中間的性質のデザートブーツといったところ。基本は素足で履くが、足臭や水虫などに悩む方にはリブの美しい白のクルーソックスと合わせるという救済策的なコードもアリ。

     

     

    theme OVER the TOP 06
    夏のアイビーアウター

     

    セーターは元々「汗をかくための服」という意味で、スウェッターと表記したほうが理解しやすいかもしれない。つまりスウェットシャツと同義。

    スウェットシャツがスクールアイテムであることは誰も疑わないだろうが、セーターもスクールアイテムだったのだ。

    事実、1920〜30年代のアメフトのユニフォームはウールニットのセーターだったし、レタードカーディガンも野球のベンチコート的役割を担っていた。

    日、防寒のためのアウターには新素材を駆使した優れたアイテムが登場しているが、春夏のアウターとしてスクールセーターを着ることをニューコードに加えたい。

    大きなレターや腕にラインの入ったカーディガンなども気分だ。もちろんインナーはボタンダウンシャツとなるが、バティックやペイズリーなどの総柄プリントも粗いニットとの相性は良い。

    今シーズン注目すべきアイテムの中にハイゲージのカーディガンがある。

    細い糸をさらりと編んだカーディガンはジャケット以上の幅広い活躍が期待できる。1960年代に流行したワンポイントのパール編みカーディガンを今コーディネイトするのは難しいが、最近は超長綿やモへヤ&シルクなどの高級素材を使用した軽く上品なカーディガンが多くのコレクションのルックに登場している。

    マイケル・バスティアンはカーディガンの袖をまくり、インナーのシャツの袖を見せるという着こなしを提案した。これもニューコードだろう。

    また、春夏のアイビーアウターとして忘れてはならないのが、コットンのウィンドブレーカー。

    スイングトップと呼ばれるドッグイヤーカラーのものや、ラインの入ったリブカラーのもの、今シーズンはフーデッドも見られる。

    ファスナーと平行にスクールカラーのリボンが走るタイプは1950〜60年代に流行したデザインで、今見るとかなり新鮮。こちらはハイテクな素材よりも古いコットンファブリックの方がコーディネイトしやすい。古着でも多数見つかるが、身ごろは細くアームホールもタイトなデザインがニューコードだ。

    1960年代後期から全米で吹き荒れたブラックパンサーの影響を受けたイェール大学の黒人学生。スクールセーター(スウェットシャツではない)を着ているが、国歌斉唱には拳を突き上げ、反権力を表明する。