Fashionzine TOPへ ポスト ハイファッションという言葉が嫌いだから納得するまで調べてみた

    ハイファッションという言葉が嫌いだから納得するまで調べてみた

    16262
    シェア

    ハイ・ファッションという言葉は嫌いだ。どことなく味気なくて、自分の好きなものが「ハイ=High」というひとつの言葉に収められているから。

    あまりにもその言葉を耳にするのもだから、納得のいくまでその意味を調べてみることにした。WWDジャパンの元編集長、(故)山室一幸さんの著書ファッション:ブランド・ビジネスにその答えがあった。

    これが、ハイ・ファッション。
    これがブランドという考え方。

    ハイ・ファッションとは

    meaning-brand-and-highfashion1

    いわゆる<ブランド>と呼ばれる商品のルーツはどこにあるのか、そもそもハイ・ファッション自体がなぜどのような形で成り立ってきたのか、まずはそのあたりから考えてみましょう。

    いうまでもなく、ハイ・ファッションというものを支えてきたもの、昔も今もその根底にあるのは「選民意識」だと思うんです。特権階級に属する人たち、いわば貴族という階級を基本に19世紀以降は、<ヌーヴォーリッシュ>と呼ばれる新興ブルジョワジーたちも含めて、そんな人種がハイ・ファッションを支持してきました。

    わかりやすくいえば、富める者が富まない者に対して「私達はあんたみたいな民間人とは格が違うんだから」という意識を誇示するための手段。つまり上から下に向けられたベクトルのなかで生まれ育ってきたのがヨーロッパにおける<モード>という考え方の基本です。

    それは生地の贅沢さであったり、刺繍や羽根飾りといった装飾という形で表現されたり、宝石という希少性であったりするわけです。数年前に世界各国で開催された「ロココと新古典」という衣装展でも展示されていましたが、あの時代にそうした表現方法が行き着いた結果、クリスタルの帆船をへッド・ドレスとして頭に乗せてしまった。こうなると美しいとか美しくないといった次元を超えて、過剰な選民意識が生んだカブリモノ系のギャグみたいなものです。

     

    クライアントからクリエイターへの力関係の逆転

    この装飾性や資沢さという選民意識が、服のクリエイションという方向へと明確に転換していったのが<オートクチュール>というファッションのそもそもの成り立ちです。

    それまでは王様や御妃様がいるお城に出入りする仕立て屋がいて、新しい反物が手に入りましたと宮廷で見せながら、気に入ってもらえたらさっそく採寸してドレスに仕立てるという、そんなグリム童話の世界みたいな図式が常識だったんです。そうした場面において服のデザインを選ぶのはあくまで王様や宮廷側、すなわちクリエイションの主導権は完全にクライアントが握っていたわけです。

    その主導権の力関係をファッションの世界で根底からくつがえしたのが、19世紀半ばにイギリスからパリに渡ってきたデザイナー、シャルル・フレデリック・ウォルトでした。

    meaning-brand-and-highfashion2.jpg彼は、パリに開いた自分のサロンで専属のモデルを使って定期的に作品発表を行って、当時の特権階級の女性達に披露したんです。すなわち「お気に召したならばどうぞお買い上げくださいませ」というロジックを成立させた。

    デザイナー側がクリエイトした作品をレディメイド(既製)のデザインとして買わせるという行為。これによってデザインの主導権がクライアントからクリエイターへと移ったということ。すなわち現在のファッション・デザイナーという存在そのもののルーツがこのウォルトの登場にあるんです。

     

    ブランド・ビジネスは香水から始まった

    meaning-brand-and-highfashion3

    そもそもブランドという存在そのものがいつの時代からビジネスとして成立しはじめてきたのか。

    僕の勝手な解釈ですが、これはアートの世界から来たシステムなんじゃないかと思います。
    例えば<ルノワール>とサインを入れる。それと同じ考え方で、デザイナーが自分が手がけた作品に自分の名前を商標としてタグをつける、「これは私の作品ですよ」と。英語で言えばマーク、フランス語でいえばグリフですけど、単なるデザインの意匠から作品自体の商標へと変わっていったそういったシステムが、ブランド・ビジネスという考え方のルーツなんです。

    でも、それは考えてみれば、ある意味で自意識とエゴの塊のようなものです。だってどの世界を見回したって、自分のフルネームが商品ブランドとして通用する世界はファッションだけじゃないですか。フェラーリだってホンダだって創業者の名前ですが、さすがにフルネームじゃない。グッチやプラダといったこの類似パターンはあるけれど、ジャン・ポール・ゴルチエとかカルバン・クラインみたいな商標は他のジャンルでは稀有でしょう。

    それでは、ファッションの世界で最初にブランド・ビジネスに手をつけたのは誰なんだ?という話になりますが、これは20世紀初頭に活躍したポール・ポワレではないかと僕は思います。ブルジョワの家庭に生まれ、当時デザイナーとして特権階級の顧客を幅広く抱えていた彼は、実業家として、自分の作品が持つブランド・ロイヤリティ、言いかえれば自分の作品に対する人々の憧れやステイタスを別のビジネスに展開できないかと思ったわけです。

    その結果として、彼はロジーヌという自分の娘の名前を香水につけて発表した。これがデザイナーが最初に手がけた香水の始まりだとモード史のなかでは語られています。

    わかりやすくいえば、自分のサロンの顧客はまず間違いなく買ってくれるだろうし、作品がオーダーできないレベルの顧客でも香水ならば廉価でそのステイタスを手に入れることができますよ、という考え方。これが後のライセンス・ビジネスやディフュージョン・ライン(高級ブランドの廉価普及版といえる商品ライン)へとつながっていく、ブランド・ビジネスの概念そのものだったんじゃないかと思います。