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    ジバンシーが作り上げたハイファッションとストリートの関係性

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    プレタポルテ(高級既製服)のマーケットが確立して以来、ハイファションとストリートファッションは、常に影響を与えあいながらトレンドを生み出してきた。

    ときに手を携えてスタイルを作り出し、ときにカウンター関係となってスタイルを生み出した。

    革命児、ラフ・シモンズ

    90年代後半のハイファッションとストリートとの関係で最も特筆すべきなのは、ロックを背景にしたスタイルの広がりといえる。それは96年の《ラフ・シモンズ》のパリ・メンズコレクションデビューからスタートする。彼のデビューコレクションで流れた音楽は、スマッシング・パンプキンズの「トゥナイト、トゥナイト」。そして、そこに現れたスタイルは、パンクの精神をはらんだスクールボーイだった。以降、《ラフ・シモンズ》は90年代後半のコレクションで、デヴィッド・ボウイやクラフトワークといった音楽シーンを背景にしたショーで人気をさらった。

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    RAF SIMONS 96A/W コレクションより

    The Smashing Pumpkins-Tonight Tonight

    90年代のハイファッションとストリートの関係で、もう一つの柱となるのが、スポーツの要素だ。もともと、メンズスタイルを形成する要素として挙げられるのは、テーラーリングにミリタリーやワーク、スポーツなど。スポーツにはハンティングやフィッシングといったカントリースポーツも含まれ、伝統的なメンズスタイルの一つを生み出してきた。

    “ハイストリート”のパイオニア≪シュプリーム≫

    90年代のストリートスタイルは、バスケットボールを背景にしたハイテクスニーカー市場の広がりが特徴で、新しいスポーツスタイルがメンズファッションの一翼を担うようになった。同時に各種のアクションスポーツの市場も大きく広がった。ヒップホップカルチャーを背景にしたバスケットスタイルとスケーターカルチャーが、ハイファッションとストリートをつなぐ受け皿として市場性を獲得していった。《シュプリーム》に代表されるこのゾーンの人気は、今でも続いている。

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    90s SUPREME CREW

    ストリートとラグジュアリーを繋ぐジバンシー、そしてマルセルとオフホワイトの台頭

    ヒップホップカルチャーのストリートスタイルがなかなかハイファッションと交わらなかったのは、そのスタイルがアメリカ発だったからだ。ファッションの中心的な発信地となるヨーロッパ(特にパリ)に、ヒップホップカルチャーを背景にしたストリートスタイルが根付き始めたのは90年代後半のことだろう。石畳にスケーターたちが現れるようになったのも、そのころのように記憶している。そのため、米国で確立していたヒップホップやスケータースタイルをハイブランドが取り入れるようになったのは、ここ10年以内のことだ。

    その代表的なブランドといえるのが《ジバンシー・バイ・リカルド・ティッシ》だ。マッチョなモデルが着るレイヤードスタイルとティッシが得意とするゴシックの匂いが放つ特別な雰囲気。その不思議な迫力は、ストリートとラグジュアリーをつなぐスタイルとして瞬く間に人気となった。そして、その後、ヒップホップカルチャーとハイファッションとの月蜜状態は現在も続いている。《マルセル・ブロンカウンティ・オブ・ミラン》《オフホワイト℅ヴァージルアブロー》といったブランドがハイファッションとヒップホップカルチャーをつなぐ役割を果たしている。

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    Givenchy by Riccardo Tisci

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    MARCELO BURLON COUNTY OF MILAN

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    OFF-WHITE ℅ VIRGIL ABLOH

    カニエ・ウェストが持つファッションへの影響力

    この市場の広がりを支える上で大きな役割を果たしたのは、SNSを使った、新しい売る仕掛けの存在だ。カニエ・ウェストら、ファッション・セレブリティがSNSで拡散することで、話題になり希少性を感じて購買に走る。このビジネス手法について、「90年代の裏原ブームがSNSで世界規模になったもの」と指摘する関係者もいる。しかし、急激なビジネスの拡大とは裏腹に、次のスタイルを出せないままでいると、次第に手詰まりなイメージにもなりかねない。そんな危うさもある。

    ナイキ・レブロン13「LuxBron」のカニエ・ウェストによるツイート

    《ガンリュウ》と《ファセッタズム》

    スケーターカルチャーとハイファッションとの関係で注目したいのは、日本発の二つのブランド《ガンリュウ》と《ファセッタズム》だ。現在のデザイナーズコレクションが閉塞感を感じさせるものになる中で、ストリートを背景にした新しい時代のハイファッションを感じさせるものだ。《ファセッタズム》は、昨年、ジョルジオ・アルマーニの支援を受けてミラノでコレクションを発表しており、今後はインターナショナル市場へ進出していく可能性もある。

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    FACETASM 2016 S/S ミラノコレクション

    エディ・スリマンによる《サンローラン》

    ロック、スポーツ、ヒップホップ、スケーター、さまざまなストリートの要素を背景にしたモードは今後、どうなっていくのか。その未来を暗示するのは難しい。しかし、エディ・スリマンによる《サンローラン》が一つの答えを出しているようにも思える。スリマンが《サンローラン》のクリエイティブ・ディレクターに就任して以来、ずっと提案しているのはロックを背景にした若々しいスタイル。その変わらなさ、パーソナルに好きなものを追求していく姿勢というのも、今のハイファッションには必要なことなのかもしれない。